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君がくれたぴかぴかの鍵。
僕にとっては、どんなものより強力なお守り。
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卒論は通った。
就職は内定した。
身の回りの大概の面倒事は片付いたはずなのに、僕の心は晴れない。
『俺は、院にいく』
火村の進路は、大学院。
少し考えれば簡単に予想がつくことなのに受け入れられないのは、火村が側にいない生活が想像できないからだった。
「…火村なら、いくやろなぁ…」
研究したいことがあるのだと言った。何かは知らないけれど、彼ならきっと望む道にいけるだろうと思う。
寂しいとは、言えない。
「カノジョじゃあるまいし」
ひとりごちて図書館へ向かう。ここにもあと何度来れるかわからないんだな、とぼんやりと思った。
自分と同じようにスーツを着た学生とすれ違う。
はつらつとした笑顔。
きっとみんな、自分の夢や希望にまっすぐ向かっているんだろう。
サークルの仲間も。
友達も。
そしてきっと、火村も。
僕だけが取り残されているような気が、した。