立海

□スキル:おくびょう
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「……また逃げられてしまいましたか」

仁王くんが開け放して出て行った扉を見ながら、私は呟く。
これで何度目だろう。 仁王くんが私に告白して逃げ出したのは。
これで何度目だろう。 私がその想いに答えてあげられなかったのは。

「冗談な訳ないでしょう。 アナタの事位分かってますよ」

私の反応を伺う時の目はいつも真剣で、そして少し怯えている。
彼はとても臆病な人間だ。
臆病だから自分も周りも誤摩化して、詐欺師の様に振る舞ってみせている。
私が返事をする前に、種明かしでもする様に矢継ぎ早に言い訳を並べ立てて、自分が傷つかない道へ逃げ込んでしまうのだ。
その道に私が入り込む事は出来ない。 いつもスルリといなくなってしまう。
そうなる前に強引に腕を掴んで抱き寄せて、彼の耳元で愛を囁ければどんなに幸せな事だろうか。

「……それが出来ない私も、やはり臆病なのでしょうね」

万が一本当に冗談だったら。
彼がそんな答えを望んでいないとしたら。
そんな事が脳裏を掠める度に、私の体は動かなくなる。
怖いんですよ仁王くん。 アナタが私を避ける様になってしまうのが。
それ位アナタの事が好きなんです。

「自分の保身を優先してしまう様な人間が、どうして紳士と呼べましょうか」

爪が食い込むのも構わずに私は両手を握り込む。
次に告白されるのは何時だろう。
その時はどうか逃げ出しません様に。


=END=

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