他BL

□愛詰め込んで
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「丁度良いから、味見してみないかい?」
「あ、あぁ」

そのような負の感情を押し殺しつつ、私はようやくマツバの家へ上がり込んだ。
そしてこの屋敷にとても良く似合っている卓袱台の上に並んだそれを見て、息を飲んだ。
唾液ではなく、息をだ。

「……マツバ、まさかとは思うが……」

“これをおにぎりと言い張るつもりか?”
流石にそこまでの言葉は出せなかった。
これでもマツバはマツバなりに頑張ったのだろう。 その気持ちを踏みにじる事は出来ない。
例え目の前のそれがおにぎりとしての形を保っていないばかりか、食べ物としての存在意義すら否定されていたとしても。

「うん? 何?」
「いや……これは炊飯器で炊いたのか?」
「違うよ。 炊飯釜は使ったけど直火で炊いたから」
「……だろうな」

でなければこんなに焦げるハズが無いよな、と心の中で溜息を吐く。
最初は全面に海苔を巻いているのかと思ったのだが。 そちらの方が何倍良かった事か。
当然そんな状態の白米(否、黒米か?)でまともにおにぎりが握れる訳も無く、なんというか崩れた石造りの建物を彷彿とさせた。
中身は完全に露出している。

「そういえば僕初めて知ったんだけど、白米を洗うって洗剤で洗う事じゃないんだね」

緑茶の入った湯のみを運びながら、無意識にマツバが追い打ちをかけて来た。
それは『そういえば』で済ませて良い問題なのか?
私は目の前に緑茶を置いたマツバの手を掴み、そして両手で包み込む様に握った。



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