他BL

□青年と浮遊青年
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夜な夜な城内を徘徊する白い人影の噂が広まり始めたのは、四国の情勢がおおよそ元に戻り始めている頃だった。

「そいつぁ何だ、霊って奴か」
「そういう事になるんじゃねーッスかね」

暁丸の整備をしていた部下にそんな話を聞かされたが、にわかに信じ難いと元親は思った。
別に霊の存在を信じていないという訳では無い。
確かに戦乱の世に散っていった者の中には未練や恨みを持っていた者も居るだろうが、そんなのが自分の城に居つく意味が無いと思っただけだ。
自分に会いたいと思う者が居てもおかしくは無いが、それなら自らが姿を現せば良いだけの話だ。
成仏出来ないにしても、城内を徘徊する意味はやはり無い。

「その霊はどこに出やがるんだ?」
「さっきも言った通り徘徊してるんで、明確な場所までは……」
「そうか……俺も城内をうろついてみるしかねぇって事か……」
「えっ、アニキその霊に会ってみる気なんスか!?」

狼狽える様に整備を中断して元親に向き直った部下の表情には、敬愛する君主をそんな得体の知れないモノに会わせたく無いという思いが如実に現れていた。
そんな思いを汲み取りながらも、元親は豪快に笑い飛ばしてみせる。

「何だ? この俺がそんな実体もねぇようなモンに殺されるとか思ってんのか? そいつぁ心外だな」
「いやそーゆー訳じゃねぇんスけど……」
「なら良いだろ? なぁに、ほんの一刻程度見回ってみるだけだ」

何の問題もねぇだろ、と微笑む君主に対し、部下はもう何も言えなかった。


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