他BL

□盤上世界における役割
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「例えるなら、香車か」
「あん?」
「貴様を将棋の駒に例えたら香車だと思ったまでだ」

真っ直ぐにしか動けないが、その代わりどこまでも動ける。
その生き様は良く似ている気がした。

「あー、あーあー、なるほどな。 なかなか上手い事言うなぁ、毛利」

理由を口にはしなかったが、元親は元親で勝手に理解したようだった。
感心したように何度も一人で頷いている元親を尻目に、元就は静かに自分の香車を動かす。
それを見て元親が慌てたのを皮切りに、しばらく二人は黙って将棋を指し続けた。

「なぁ毛利、さっきの話なんだが」
「どの話だ?」
「俺が香車だとかそういう奴」
「その話はもう区切りがついたであろう」
「いんや、だったらお前はどうなんだよと思ってよぉ」

どうなんだ、と問いかけながら元親は元就から奪った歩兵を盤上に置いた。

「貴様はどう考える?」
「そうだな……桂馬、だな。 正直あの駒は読み難いし、取り辛いからな」
「なるほど、だが忘れておるぞ長曾我部」

パチン、と初めて元就が音を立てて駒を動かした。
元就がこのように駒を打って来る時の事を元親は知っている。
将棋を指す度に何度も聞いた、絶望の音だ。


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