他BL

□天を統べる器
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「貴様のやり口はまるで博打ぞ。 我にはまっこと理解できぬ」
「互いを理解できねぇって事だけは息が合うんだよな、俺ら」

そう言って笑うと、元就はフンと鼻を鳴らした。
理解出来ない考え方をするという事は、自分が絶対にしない事を仕掛けてくるという事であり、逆に考えが読み易いという事に二人は気付いていた。
そんな訳でいつまでも決着が付かず、むやみやたらに兵力を消耗する不毛な争いをして国を危機に追い込むのはどちらも臨む所ではなかったので、現在こうして同盟を組んでいる。
双方不本意な形の同盟ではあったが、仕方の無い話である。

「確かに俺は国の治め方が下手かもしれねぇ」
「しれないも何も下手であろう」
「いやそうなんだけどよぅ……だから、あんたのそういう所だけは羨ましいと思う」

そう言うと、隣の元就が怪訝そうに眉を顰めるのが視界に映った。
元親も自分で言っておいてなんだが変な発言だと感じている。
一時は絶対に相容れないと思ったし、認めたくもないと思った相手。
なのに、その相手を『羨ましい』と思ってしまった自分が居て。

「あんたが天下を治めて全部を自分の領地にしたら、全ての民が暮らしやすい世にしてくれんのかもしれねぇな」

国主という立場も忘れて、本末転倒な感想を抱いている自分も居た。
どうかしてる。 それは分かっている。
そんな事を口走っている自分の口がまるで自分ではない様だと、元親は頭の隅で思った。

「……本気でそう思っているのならば、早々に四国を我に寄越せ」
「ははっ、そりゃ勘弁してくれ。 流石に本気じゃねぇさ」

いかにも取り繕った回答だったがまぁ良いか、と自己完結する。
これ以上何か突っ込んでこられる前にもう一つ饅頭を詰め込んでお茶を啜ったら、盛大にむせ込んでしまった。
ゲホゲホと情けなく咳き込む元親の耳に、元就の呆れた溜息が届いた気がした。


=了=

→後書


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