他BL

□押し込められた恋なんかより
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昇降口の靴箱を開けた瞬間、ゲンナリした。
本来靴を入れるはずのスペースに色とりどりの封筒が散乱している。
手に取るまでも無く、それらはラブレターだと視認出来た。
高校生の平均より遥かに背が高く、目つきも悪い青峰に対する女子の告白方法といえば、過半数以上がこれだった。
これらは中学の後半から増え続け、その度にゲンナリする。
高校に入れば少しは変わると思ったのに。

「へー、青峰ってモテるんやな」
「うぉ!?」

不意に背後からかけられた声に、不覚にも動揺してしまった。
後ろを振り向けば、自分よりも背の低い先輩がいつも通り微笑んでいる。
青峰は心底面倒臭そうに溜息を吐きながら、その先輩に向かって口を開く。

「何の用だよ、今吉サン」
「いや別に用はないんやけど、青峰が靴箱前でゲンナリしとったからなんやろーと思うて」

ええなー羨ましいなー、等と言いながら今吉はやはり笑っている。
羨ましいなんて思っていないくせに。
勝手な憶測に過ぎないが、きっと当たっているはずだ。
自分の中で結論を出し、青峰は色とりどりの封筒達をとりあえず鞄に乱暴に仕舞い込んだ。
中で小さくグシャリと潰れるような音がしたが、気にしない。

「それ、どないするん?」
「あ?」
「やっぱり読むんやろ?そんで返事とかすんの?あ、でも直接呼び出す方が青峰らしいわな」

いつもと変わらない表情で、今吉はベラベラと言葉を並べ立てる。
その全てが彼らしくない。
表情は変わらないのでは無く、変えまいと無理に繕っている様で、らしくない。
ベラベラと人の内情に触れるような言葉を並べ立てる姿も、らしくない。
今吉翔一らしくない。


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