他BL

□押し込められた恋なんかより
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「読まねーよ。めんどくせぇ」
「あら、そうなん?」
「大体嫌いなんだよ、こういうのは」

女の女々しい部分が現れすぎていて、と付け加えると、今吉は首を傾げた。
ラブレターのどの辺りが女々しいのか考えているのだろう。
別に隠す気も無いので、青峰は理由を口にする。

「直接会いに来る度胸がねーから」
「……別にそういう訳や無いと思うけど」
「俺はそう思うんだよ」

顔も分からないような、名前を聞いても思い出せないような、そんな女から愛を囁かれた所で嬉しくもなんともない。
現在鞄の中に犇いているラブレターだって、青峰にしてみれば無名も良い所だ。
有って無いような名前に、意味も気持ちも無い。

「ドライやなぁ……」
「何とでも言え」
「でも青峰らしいな」

そう言った時、初めて今吉の表情が崩れた。
僅かに眉が下がっただけだが。
その表情の変化の意味を悟った青峰は、小さく溜息を吐く。

「だから俺はアンタが好きなんだよ」

らしくなく、そんな事を言ってその場を後にする。
意味も気持ちも無い手紙でなく、直接的に。
在りし日の今吉と同じ様に。

「青峰っ!」

このまま屋上にでも行くかと思った時に、背後から声をかけられた。
振り向かないが、足は止める。

「……気ぃ向いたら、練習出てな」

控えめな誘いにこっそり笑いながら、屋上へ向かう。
ただ放課後の練習には顔を出しても良いかもしれない。
押し込められた恋なんかより、口に出された愛の方が有意義だ。


=END=

→あとがき


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