他校

□夕立後の穏やかさ
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やってしもた、と忍足は後悔していた。
と言うのも、数日前に跡部の電話を盗み聞いてしまったのである。
内容は外国語(多分英語では無い)だった為に一割も解らなかったが、その行為だけでも跡部の機嫌を損ねるには十分だった。
でも、自分と二人きりで出掛けた時に電話に出られたら気になってしまうのは仕方がないように思う。
ただの自己弁護でしか無いけれど。

(それよりも問題はこの状況や……)

そんな訳でこの所どうにもギクシャクしていた二人を見かねて、他のレギュラー達が一つ作戦を練ったらしい。
内容は単純に『忍足と跡部を二人きりにする事』。
そしてその作戦は決行され、現在二人は近場のスポーツショップで買い出し中であったりする。

「逆に気まずいっちゅーねん」
「何か言ったか」
「いや、何も」

忍足が横に首を振りながら否定すると、跡部も特に興味なさそうに話を終わらせた。
先程からずっとこんな調子だ。
必要最低限な会話……と呼べるかも微妙な言葉しか発していない。
本日十数回目の沈黙の間を、店で流しているBGMが通過していく。
これを“気まずい”と呼ばずに何と呼べばいいのだろう。



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