他校
□夕立後の穏やかさ
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結局あれから満足に話も出来ず、二人は店を後にした。
ただ不思議なのは、いつもは忍足や樺地に持たせるような荷物を、跡部が自分で持っているという事だ。
あの跡部が。
「何突っ立ってんだ。ほら、行くぞ」
「あ、あぁ」
さらに機嫌を損ねられては適わないと、忍足はすぐさま跡部の背中を追った。
真隣に並んで歩く勇気は無いので何歩か後ろを付いて歩く。
こうして見ると、跡部とその左側に揺れる陳腐なビニール袋はミスマッチでしかない、と忍足は思う。
自然と忍足の腕はミスマッチな空間へ伸び、背後から跡部の左手首を掴んだ。
振り向いた不機嫌な碧眼と視線がぶつかる。
「この手は何だ」
「いや……重そうやから、代わりに持ったろうかと思ってな」
「バカにすんな、バーカ」
そう言って、あっさり振り払われた。
確かにあの言い方ではバカにしたように聞こえたかもしれない。
もちろん、そんなつもりは微塵も無い。
それにいつもはあんな言い方でも、露骨に罵倒される事など無かったのに。
「…………もう俺なんておらんでもええっちゅー事なん?」
ふと湧いた疑問が口から零れた。
たったあれだけの事で嫌われてしまったのだろうか。
いや忍足からすれば『たった』だが、跡部からすれば違うのかもしれないけれど。