他校

□恋しがりな子供
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※あらすじ※
何時になっても本を返さない忍足に怒った跡部は、部活中に自らシングルスの相手をして性根を叩き直そうとしました。
しかし忍足の挑発により、その試合は昼休みに繰り上がりました。


◆◆◆


正直、勝負の結果は見えていた。
跡部のスマッシュが決まって、6−4で俺の負け。
久々のシングルスにしては善戦した方やと自画自賛。
元々俺はシングルス向きやない。かと言ってダブルス向きでもない。
何でも出来るが故に突出しない、器用貧乏ってやつや。
天才ってのも辛い。

「流石氷帝の部長、天才も立場無いわぁ」
「手ぇ抜いといて何言ってやがる」
「それはお互い様やん」

放課後にも部活が有るのに、こんな所で全力は出してられへん。
それに昼休み明けの授業に間に合わせる為にも、手は抜かんとアカン。
俺と跡部が本気で打ち合ったらタイブレークは確実や。多分。
しかし、

「……で、これからどないするん」
「次の時限から出るしかねーだろ」

すでに授業開始を告げるチャイムはとっくの昔に響き終わっていた。
授業終了を告げるチャイムが鳴るまではあと20分位。
こんな中途半端な時間に移動しても仕方ないから、2人並んでベンチに腰を下ろした。

「おい。俺様が勝ったんだから、明日こそは本返せよ?」
「あれ、そんな賭けみたいな内容やったっけ?」

そんな賭けをした覚えは無いが、発端はそんな話やったと記憶している。
もう長い事借りっぱなしの小説。
持ってきて無いと跡部にはゆーたが、ほんまは鞄に入っとる。
跡部が怒る事は火を見るより明らかやったが、それでも返す気にはならへんかった。

「アレもうちょっと借りといてええ?」
「ダメだ」

3文字でバッサリ切られた。
予想はしとったが、正直辛い。
分かり易い溜め息を吐くと、タオルで頭を拭いている跡部がポツリと呟いた。


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