他校

□恋しがりな子供
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「…………お前のクラスくらい何時でも行ってやる。だからさっさと返せ」
「はっ!?」

バレとったんか……。
そう思うと急に気恥ずかしくなる。
片手で顔を覆いながら、俯くように背を丸めた。

「何で分かったん……」
「俺様のインサイトを舐めんな」

インサイト便利すぎるやろ……。
呆れながらも感心してしまう。
その内、本来見えたらアカン物も見えてしまいそうや。

「で?気付いたんは何時や?」
「期限切れてから2日目だ」
「早っ!」

今度は口から漏れた感想と共に、俺の体は跳ね上がった。
跡部の言う『期限』からは、もう1週間ちょっと経過している。
その間返さずにいた俺も問題やけど、気付きながらも俺の教室に通い続けた跡部も大概や。
気付いとったんなら、一言言えば済むのに。
そんな疑問を含めて跡部に視線をやったが、逸らされた。
空を仰ぐように上を向き、タオルで空よりも濃い碧眼を隠してしまう。
そしてしばらくの沈黙の後、ポツリと一言。

「……俺だって、会いたくてたまらねぇ時があんだよ……」

その一言は“王様”と称されるようないつもの跡部やなくて、ただの跡部景吾やった。
俺と同じく、恋しがりの中学3年生。

「……アカン。めっちゃ嬉しい。抱きしめてもええ?」
「ダメだ」

またしても3文字でバッサリ切られた。
しかし今回のは本心やないと、跡部の表情(下半分)で判断する。

「素直やないんやから」
「それはお互い様、だろ?」

うっすら口元だけで笑う跡部を横から抱きしめてながら、放課後には本を返そうと心に決めた。



=END=


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