他校

□俺とお前と結び目と
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「跡部って、ネクタイ結べへんの?」

そんな失礼な事を聞いてきた伊達眼鏡野郎を、思い切り箸箱で引っ叩いた。
ちなみに昼食時の屋上にて。

「痛ったぁ!!歯ぁ砕けたかと思ったわ……」
「俺様を侮辱した罰だ。ざまあみろ」

衝撃でズレた眼鏡を掛け直す忍足の頬には、見事に四角く赤い痕が残っている。
勢いをつけ過ぎたらしい。
だが、部活までにはその赤みも引くだろう。
どうせコイツは次の授業をサボる気で居るから、騒ぎになる事も無い。

「で、何で俺様がネクタイ如きを結べないと判断したんだ?」
「だって、いつも上まで締めて無いやん」

ほら今も、と指差すのは緩められた俺のネクタイ。
俺の視線の先にある忍足のネクタイは、対照的にキッチリ締められている。
だが別に忍足が真面目と言う訳でもない。
緩んでいる時もある。今回はたまたまだ。

「だから、上手い事結べへんのかなーって」
「これは俺のポリシーなんだよ」
「やっすいポリシーやなぁ……」

呆れながら玉子焼きを口に運ぶ忍足。
自分のポリシーを『安い』と称された腹いせに、玉子焼きを一つ奪う。
ついでに言えば、上下のボタンを留めないのも俺のポリシーだ。
そう言ってやると、

「おまっ、無防備にも程が有るわ……」

とかなんとか言って、深い溜息を吐かれた。
そして箸を弁当箱の上に置くと、いきなり俺の襟元へ手を伸ばしてきた。


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