他校

□物語じゃない恋語
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声変わり前の甲高い子供の声が耳を擽る。
時折鬱陶しいと思わない事も無いが、自分が好き好んで公園のベンチで読書と洒落込んで居るのだから、文句は言わない。
ただ、秋風が勝手にページを繰るのだけは迷惑だった。

「あぁ……何ページ目やったっけ……」

1行目だけに目を通しながら、読み途中のページを探す。
5ページ程遡った所で見覚えのある文章を見つけたので、2行目以降にも目を通す。
14行目の文には見覚えが無かったので、どうやらここまで読んでいたようだ。
気を取り直し、足を組み替えながら文面を目で追い始める。

今日は練習の無い水曜日だった。
いつもはフラリと映画館に足を運んでみたりするが、生憎今の時期はそそられる様な映画を上映していない。
ので、やはりフラリと黄色に覆われた公園へ足を運び、読書の秋を満喫していた。
数日前に少し厚めの文庫本を購入したのも、その気まぐれに貢献している。
初めて購入した作家の作品だったが、今回はアタリだなと感じる。
内容は良く言えば王道、悪く言えばありきたり。
所謂ベタな学生の恋愛物だが、作者の繊細な心理描写がとても好みだ。
他に作品は無いのかと巻末の作者作品一覧を見たが、どうやらこれが初出版らしい。
読み終わるのが勿体無いな、なんて感傷に浸りながらまたページを繰る。


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