他校
□365日の壁
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「何笑っとるんですか。キモイ」
「キモイとはなんや。俺の笑顔は魅力的やで」
「知ってますケド」
その台詞を吐く時だけしっかりこちらを向いた彼に、うっかりトキめいた。
どこの乙女や俺は、とばかりに髪を掻く。
さらに『顔真っ赤ですよ』と指摘されて、掻くから掻き毟るに発展した。
「……謙也さん」
「な、何や?」
多分まだ少しばかり赤いであろう顔をマフラーで隠しつつ、返事を返す。
ちょっと声が上ずった気がしたが、彼はスルーしてくれたようだった。
代わりに。
「一年間、ちゃんと待っといて下さいね。すぐに追いつきますんで」
再度顔が赤くなるような台詞を耳元に届けてくれたが。
「……俺は待つの苦手やから、はよしてな」
「はいはい」
掻き毟って乱れた髪を、下から伸びてきた手が直していく。
一年後にはこの距離も変わってくるのだろう。
そんな事を考えながら待つ一年だったら、少しは楽しいかもしれない。
「一年後には呼び方を『謙也さん』から『謙也くん』に変えてもええですか?」
「………えー、それは何か嫌やなぁ」
=END=
→あとがき