他BL

□黄昏時のサボタージュ
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海岸線沿いに出てからも、しばらくバイクは走り続けた。
その一角にある海を一望できる駐車場兼休憩スポットに着く頃には、すでに太陽は水平線ギリギリに浮いていた。
そのスポットは道路から円形に空間がとられていて、形に添って腰くらいの柵が並んでいる。
一応そこを乗り越えれば、そのまま砂浜へ降りる事も出来た。
俺は横向きにバイクに腰掛けながら、ぼんやりとその景色を眺めている。
呼吸をする度に、潮の香りが鼻腔を擽った。

「あんたにしては、なかなか良い提案だったね」
「だろ?」

俺と背中を合わせるように、反対側に甘寧は座っている。
顔こそ見えないが、多分得意げに笑っている事だろう。
不本意ながら調子に乗らせてしまったらしい。
このままだと癪に障るので、その調子を落とす方法を思案してみた。
250mlのコーラを半分まで飲んだ所で、

「そういえばあんた、仕事はどうした?」

そう口にしてみた。
『仕事の停留所』なんてセンスの無い比喩で揶揄される位、甘寧は仕事をしない。
しないというか、やらない。むしろ出来ない。
もちろん全ての仕事をやらない訳じゃなく、デスクワークに限っての事だが。

「……………やってねぇ」

しばらくの沈黙の後、掠れるように弱弱しい返事が返ってきた。
あまりに予想通りすぎたその答えに、思わず噴出す。
どうやら調子は上手い事下がったらしい。

「あーらら。また陸遜殿や呂蒙殿の雷が落ちるな」

こういう点において非常に厳しい同僚や上司の名を出せば、甘寧がうろたえる様に肩を揺らした。
特に同僚の方は、この甘寧の愛車に『仕事をして下さい』と書かれた張り紙をしてしまう位に厳しい。
残念ながらその張り紙も効果は無く、無理に剥がそうとした為に歪に破れてしまっているが。


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