他BL

□鈴見酒
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「よっ」

凌統は目を見開いた。
逆立った金髪。紅い防具。耳に通した飾り。黒い鳥の羽。二対の龍。
見間違う事なんて出来るはずが無い。
目の前に居るのは、死んだはずの甘寧だった。

「あ、あんた何でっ!まさか化けて出たのか!?」
「化けて出てねーよ!足あんだろ足!」

甘寧がベシベシと叩きながら足を強調させる。
確かに下半身は存在し、しっかりと地面を踏んでいる。
上半身も含め、甘寧は確実に凌統の目の前に立っていた。

「死んで、なかったってのか……?」
「まぁな。俺もあそこで確実に死んだと思ったんだけどよ」
「何時目覚めたんだよ」
「今朝」
「今日かよっ!!!」

確かに至る所に包帯が巻かれていた為、全快では無いようだと思ってはいたが、まさか今日の話だとは思ってもみなかった。
化け物かコイツ、と凌統は心の中で毒づいた。

「隣良いか?流石に立ちっぱなしはまだ辛ぇんだよ」
「そもそも外出すんなっての」
「そりゃそうなんだが……どうしてもやらなきゃいけねぇ事が有ってな」

凌統の隣に腰を下ろしながら、いやに真面目な顔で甘寧が言った。
その横顔に胸がざわつく感じを覚え、その感じを飲み干そうと杯を口につける。
しかしもう中身が無い事に気づき、小さく舌打った。

「で?何だよ、やらなきゃならない事って」
「あぁ?お前忘れちまったのかよ」

そんな声を聞いた直後、無理矢理甘寧の方向に首を回された。
刹那の痛みと驚きで杯が手の中から零れ落ちる。
両頬を手で挟みこまれて、首の方向を固定された。
この形は、どこかで覚えがある。

「せっかくお前のぶちまける『思い』を聞いてやろうと思ったのによ」

あぁ、あの日だ。あの日と配役が逆転してるだけだ。
凌統は脳の隅でそう思った。
そして、あの日自分が言った事を瞬時に思い出して居た堪れなくなった。
感情の暴走という奴はどうにもらしくない。


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