他BL

□戦場の置き土産
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目を覚ました時に飛び込んで来たのは、左目を覆っている白い布の質感だった。
凌統がそれを包帯だと認識するのに、大して時間はかからなかった。

「あ、れ」

呆けて漏れた声に覇気はなく、微妙に掠れている。
その声を自分で聞いた事で凌統はある事を確信した。

(俺……生きてんのか……)

その事実を認識するにつれ、体のあちこちがズキズキと悲鳴をあげている事に気がつく。
痛みに顔を若干歪ませると、入り口と思われる方向からの気配に感づいた。

「おぉ!気がついたか!」
「呂蒙殿……」

視界が明るい右目を動かすと、安心したような表情を浮かべた呂蒙の姿が映った。
凌統は体を起こそうとしたが、全身を駆け抜ける様な痛みに襲われ呻き声を漏らした。

「無理をするな。瀕死の重傷を負っていたのだぞ」
「……俺、生きてるんですね」

先程思った事をそのまま口に出した。
痛みでぼやける思考を総動員させても、未だに信じがたい。
合肥東城にて膝をついた事をぼんやり思い出しながら、凌統は呂蒙に問いかけた。

「……そう言えば……戦は、合肥は、」
「その事か。合肥を制するには到らなかったが、本隊は被害を被る事なく撤退出来たぞ」
「そうですか……。あと、俺を助けたのは誰なんです?」
「甘寧だ」
「はぁ!?」

予想していなかった答えに凌統は声を上擦らせた。
と同時にその答えが、自分が意識を失う寸前に思い浮かべた人物と同じである事に気がつき、顔を赤らめる。
呂蒙はそんな凌統に構う事なく、さらに話を続けた。

「お前を拠点に送り届けてからのあいつの活躍は目覚ましかったな。多くの拠点を制し、多くの将を撤退させておったな」

甘寧の活躍ぶりが語られる度に、凌統は自分の肩身が狭くなるような錯覚を覚えた。
自分は助けられた挙げ句に床に伏せっているのに、仇は目覚ましい戦功を挙げている。
一人の武将としても、悔しかった。

「噂をすれば、来たようだな」

呂蒙に言われずとも、微かに聞こえる鈴の音が何よりもそれを体現していた。
それもドタバタという足音にかき消された。


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