他BL

□戦場の置き土産
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「よぉおっさんも来てたのか」
「……あんた療養中の人の前くらい静かに出来ない?」
「凌統!目ぇ覚めたのか!良かったな!」

凌統の皮肉にも動じず、甘寧は純粋に喜びを露わにした。
相変わらずの二人の様子に呂蒙は溜め息を一つ。

「甘寧。俺はもう行くが、くれぐれも凌統を刺激してやるなよ」
「わぁ−ってるよ」

本当に分かって居るのか怪しい反応に呂蒙は訝しげに眉を顰めたが、特に言及する事無く室を後にした。
室内には不服そうな表情の凌統と笑顔を浮かべる甘寧が残された。

「……あんた、先の戦で活躍したらしいね」
「ん?あぁ、まぁな!お前の仇もとってやったぜ!」
「勝手に殺すなっの」

辛うじて動く右腕で膝下辺りを力無く叩く。
本当なら自慢の体術でボコボコにしてやりたいが、この怪我具合では叶わない。
何より精神的にもそんな気分にはなれなかった。

「今起きたばっかで体調最悪なんだよね……だから帰ってくんない?」
「それもそうか。悪かったな」

そんな凌統の雰囲気を悟ってか、甘寧もあっさりと退いた。

「あっ、でもこれだけは言っとく」
「何だよ。手短に頼むぜ」
「今回俺が暴れられたのは、お前のお蔭でもあるんだぜ」
「……はぁ?俺が居なくなって邪魔が減ったとでも言うのかい?」

自虐的な皮肉を口にすると、甘寧は顔をしかめた。
そして、包帯の上から凌統の頭を掻き乱しす。
ジクジクと傷に響く鈍い痛みに、凌統は思わず悲鳴をあげた。

「イタタタ……ッ!!」
「馬鹿野郎。そうじゃねーよ」

頭を掻き乱した手をそのまま頬を挟み込むように持って行った。
ほんのり自分よりも高めの体温に触れられて、凌統の体がビクッと反応を示す。そんな凌統の瞳を覗き込むように、甘寧は顔を寄せた。

「お前がやられた時頭に血が昇ってよぉ。怒りに任せて敵をぶった斬ってた訳。だから、お前のお蔭でもあんだよ」
「……本当、あんたは単純だよ……」

皮肉を呟いたは良いが、赤面しきった顔では説得力はないだろう。
視線を逸らしたくても、甘寧の手が邪魔だった。

「そうだな。こんな俺と一緒に戦える奴はお前だけだ。」
「そうだな。あんたみたいなのを相手にするのは俺くらいなもんだろうね」
「だったら、早く治せよ」
「だったら、早く寝かせてくんない?」

再び辛うじて動く右腕で甘寧に退くよう促す。
少しばかり不満げな表情を浮かべつつ、甘寧は頬から手を話した。
その表情に凌統は吹き出し、小さく素直に呟く。

「俺も寝たきりでいらんないしね……あんたの為にも」
「ん?何か言ったか?」
「いーや。幻聴でも聞いたんじゃないのかい?」

ふふ、と凌統はおかしそうに笑った。



=了=


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