他BL
□少年Aと少年H(仮)
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さっきから俺の半身はバカみたいに幸せそうな笑顔を浮かべている。
俺が“生まれて”から初めてみせる表情だった。
「アレルヤ……アレルヤかぁ……」
そんな呟きを反復する度に、コイツは小さく笑う。
時計が無いから正確じゃあないが、かれこれ40分はこうしているハズだ。
正直、不気味以外の何者でもない。
『テメェさっきから気持ち悪いんだよ』
「えっ、そうなんだ……ごめんよ」
『大体何が嬉しいんだかも分かんねぇし』
「だって、僕に名前が出来たんだよ?もう番号だけじゃないんだ。それが嬉しくて……」
そう言ってまた笑う。
コイツは今日、寝たきりの女(マリーとか言ったっけか)に名前を貰った。
“神を褒め称えよ”なんて虫酸が走る意味が有るらしい。
何が神だ。何もしねぇくせに。
それだけなら辛うじてまだ良かった。
「それにキミを名前で呼べる事も嬉しいんだ……ハレルヤ」
あの女はご丁寧に俺にまで名前をつけやがった。
その名は『ハレルヤ』。意味はアレルヤと変わりない。
全く持って不愉快だ。
俺に肉体が有ったなら、今頃鳥肌が立っているに違いねぇ。
『次その名前で呼んだら体乗っ取るからな』
「えっ!?どうして?」
『俺らをこんな状況下に置いた神様とやらを褒め称えてぇのか。だとしたらとんだお人好しだな』
信仰が無くなればその存在すらも消え失せるような安っぽい存在を称える気は、原子単位で数えても無かった。
だからこそ、自分の名も半身の名も嫌悪しか感じない。
単にあの女に付けられた名を易々受け入れるのが癪だったってのも有るが。