立海

□銀色のジェラシー
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……この状況をどうやって打破するか。
先程からそればかり考えているが、一向に解決策は浮かばない。
どうしたものかと空を仰げば、一つ風が吹いた。

「……寒い」
「なら戻りましょうよ」
「嫌じゃ」

拗ねたような声色。
私に背を向けて――しかし頭は私の膝の上――寝転ぶ仁王くんは、少し体を丸めた。

「全く何なんですか。風邪を引いても知りませんよ」
「そん時はお前さんも道ずれじゃ」

確かにこのまま寒空の下に居れば、双方風邪でダウンも十分ありえる。
制服の胸ポケットから取り出した懐中時計によると、仁王くんに屋上に引っ張られてから二十分は経過していた。
もちろん、とっくに授業も始まっている。

「……仁王くん、いい加減私をここに連れてきた理由を話して下さいよ」
「別に。理由なんか無か」

四回目の同じ返事。
確かにいつも仁王くんが私を呼び出す理由に、大した意味など無い。
有るとすれば、ただ単純に一緒に居たいだけ。
しかし、今回はそういう風には見えない。
単純な理由の先に、もう一つの理由が存在するような気がしてならない。

「なら、帰らせて下さい」
「断る」

このやり取りも四回目。
そして私は四度目の溜息を吐く。
この気まぐれな生き物の気持ちを知るには、少し時間が掛かる。
それでも、“普通の友人”よりは進歩しているのだけれど。

「私、何かしましたか?」
「自分の胸に聞いてみんしゃい」

相変わらず拗ねた風なままの仁王くんだが、私の膝の上から動く気は無いらしい。
という事は、別段怒っている訳でもないと言う事。
そうなると理由も限られてくる。


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