他BL

□唯一神の名を紡ぐ唇
1ページ/7ページ


薄暗く物悲しい雰囲気が漂う廊下を、ソーマは早歩きで進んでいた。
人革連が所持している孤島に建てられた円形の建物。
それは監獄としか例えようが無い位、静かに聳え建っていた。

「こちらが鹵獲した羽付きに搭乗していたパイロットの拘留部屋です」
「案内して頂き、真にありがとうございます」
「いえ。では、私はここで」

一礼をし、監獄の案内人は来た道を引き返していく。
ソーマはしばらく所々錆びた扉を眺めていた。

「この先に……私の同胞を殺した同胞が……」

ソーマは改造された人間だった。
そして、仲間となるはずだった同胞を殺された。
同じ改造を施された裏切り者――E‐0057。

「あの男がっ……」

ソーマは今までの戦いを思い返した。
あのオレンジ色の機体のパイロットは、まるで靄のようだった。
姿を見た事は無いが、声は数える位聞いたことがある。
その声から人物像が一つとして見えて来ない。
基本的には凶暴で情なんて微塵も持ち合わせていない人間失格者に感じられる。
しかし、それだけでは無い。
本能的にそれを感じ取っていた。

ギギギ、と耳障りな音をたてながら扉が開かれる。
小部屋の奥に、彼は居た。
全身を椅子に拘束され、瞳を隠されていた。
苦しそうに喘いでいた。

「奴が……私の、仇……?」

ソーマは拍子抜けした。
想像していたモノとまるきり違っていたからだ。
確かに体は鍛え上げられている。
しかし、それだけだ。
戦う兵士のオーラが感じられない。
それは、拘束されているからなのかもしれないが。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ