立海

□○月×日の憂鬱
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「おい柳生」
「おや、丸井くん。どうしました?」

二人の後を追いかけて保健室に行くと、担架を運び出している最中だった。
それに構わず、話を続ける。

「お前、ワザと真田にボールぶつけたろ?」

ピクリと柳生の眉が上がる。
仁王の方はいつもと変わらない。

「やはり分かってしまいましたか。先程仁王くんにも言われましたよ」
「やっぱ仁王も気付いてたか」
「当然」
「それで?動機も分かっているんでしょう?」

俺は頷いた。
これは柳生の本当の性格と仁王との関係さえ知っていれば、簡単に分かる謎だ。
テニス部のレギュラーにしか分からない謎。

「……真田が仁王の事を転ばせたから、だろ」

ご名答。
柳生はニヤリと笑って、低く呟いた。
その表情は紳士には程遠い。

「意図した行動では有りませんが、仁王くんを転ばせた事は事実ですので」
「だからって、あんな思い切りボールぶつけんなよ」
「俺って愛されてるのぅ」
「んな呑気な事言ってる場合か!」

心の底からの叫びを仁王にぶつけてやった。
あんな愛され方で良いのかコイツは。

「確かに少々やりすぎましたかね」
「少々って……」
「とにかく、担架を真田くんのもとへ運ばなければならないので」

失礼、と俺に挨拶し、柳生と仁王は担架を運び出して行った。
俺の横を通り過ぎていく。

「お前も気をつけた方が身のためだぜ」

背後から聞こえてきた声に、反射的に振り向く。
見えたのは後ろ姿だけ。
今のセリフはどっちのセリフだ?
素をさらけ出した柳生か、順当に考えて仁王か、あるいは二人共か。

「……忠告かよ……むしろ警告?」

冷や汗が背中を伝うのがリアルに感じられた。
なんて奴らと友達を続けてるんだろうな、俺。



=END=

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