立海
□○月×日の憂鬱
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準備体操を終えて、メインのサッカーの授業が始まる。
今日は今までの集大成として、A組vsB組の真剣試合。
ピッチではゴールキーパー以外の選手が一つのボールを追いかけている。
そして、俺はと言うと。
「暇だな……」
ボールを追いかけていない側だった。
正直、俺はそんなに走り回るプレイスタイルじゃないし。
ジャッカルみたいな守備力を持ってる訳じゃ無いが、走り回って体力を消費するよりはマシ。
どうでも良いけど、ジャッカルってサッカー似合いそうだよな。
「ブン太!何よそ見しとんじゃ!」
ハッと我に返ると、シュート体制のA組の生徒。
次の瞬間に飛んでくるモノクロカラーのボール。
「危ねっ」
間一髪で弾き返す。
どう?天才的?と心の中で呟いていたら、転がっていったボールを仁王がトラッピングし、相手ゴール方面へドリブルを始めた。
なかなか器用なもので、順調に数メートル進む。
「させん!」
しかし、それは真田のスライディングタックルによって遮られた。
ボールを弾き出すと同時に、仁王がその足に躓いてグラウンドに倒れた。
一見反則にも見えるプレイだが、あれが意図的なもので無いことは真田の性格を考えればすぐに分かる。
単なる二次災害、と言った所だな。多分。
「柳生頼んだぞ!」
「はいっ」
転がっていったボールを柳生は捉えたみたいで、軽く足を振り上げた。
あの位置から直接シュートを入れる気らしい。
身構える俺。
一瞬、遠くに居てよく見えないハズの柳生の目が鋭く睨んで居るように見えた。
そして、ボールが放たれる。
まるでレーザービームのように向かってきたボールは、見事にゴールを決めた。
真田の後頭部に。
「うおぉぉい!!真田ぁー!」
俺が思わず叫ぶと同時に、真田の顔がグラウンドにうつ伏せた。
俺や仁王、そして柳生を含めた両クラスの生徒が周りに集まる。
「真田くん、大丈夫ですか!」
「これ担架呼んだ方が良いんじゃね?」
「担架ー!」
「誰がそんな古典的なギャグを言えって言った!」
仁王のボケに律儀にツッコミを入れる俺。
誰だ。コイツに銀魂読ませたの。
……まぁ、俺なんだけど。
「私持ってきます!」
「俺も行くぜよ」
いち早く動いた柳生とそれに付いて行く仁王。
客観的に見れば部活の副部長を心配する好感度の上がる光景だ。
けれど、なんか煮え切らない。
俺は未だに突っ伏したままの真田に同情した。