他BL

□アカツキ
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一時期、月は赤いモンだと思い込んでいた事がある。
俺が『生まれた』時は施設に幽閉されていたから、外なんて知るはずも無い。
外に出てからは一分一秒を生き抜くのに必死で、空なんて見上げる余裕も無い。
唯一そんな余裕があるとすれば、自分達の身を守った直後だけだった。

「今日の月も赤いな……」

狂気に満ちたように染まる月は気分が悪い。
あぁ、それは辺りに蔓延する生臭い臭いの所為だ。
俺の足元にはグシャグシャになった元人間が数人転がっている。

『ハレルヤ……また殺してしまったの?』
「あぁ」
『もう今月になって何人目?』
「知らねぇ」

俺達を狙ってくる汚い大人は、少なくとも指では数え切れないくらい居た。
狙いは金だったり内臓だったり、時には体だった事もある。
その全てを、俺は斬り刻んできた。

「もうこのナイフも使えねぇな」

すっかり血で錆付いてしまったナイフを足元に放り捨てる。
ベシャリと耳障りな音が届いて、血の池に波紋が広がった。
気分が悪い。気持ちが悪い。

『真っ赤だね、僕達』
「気味が悪いまでにな」

両手を広げてみれば、余す所無く血に染め上げられていた。
多分足元も、服も、髪も、顔も、全てが赤に染まっているだろう。
元々は人間の一部であった血液によって。
これが人間の真の温もりだというのなら、それは嫌悪でしかない。
俺達の体内に流れているものだとしても、だ。


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