立海
□誕生奏歌 ver.MN
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【Time:Morning】
ありえん。
本当にありえん。
自分の誕生日に風邪をひくだなんて、ありえない。
「……38.5℃……」
そう頑張って誤魔化してみても、目の前の体温計は誤魔化せない。
ここ数日寒波が続いていたのと、疲労が溜まっていたのが原因だろう。
体が熱い。でも寒気はする。頭が痛い。くらくらする。
少しでも布団から起き上がるのでさえ億劫だ。
「水……水……」
何日も砂漠を彷徨った人間のようなセリフを呟きながら、ベッドサイドに手を伸ばす。
最後に家を出た姉貴が置いていった、スポーツドリンクが入ったペットボトル。
それを手にとって開けて飲む。
たったそれだけの単純で簡単な作業が、酷く辛かった。
「くっそ……俺が何したっちゅーんじゃ……」
誕生日に風邪だなんて、何かの天罰のように出来すぎている。
ぼんやりと神様を恨む中で、何故か俺の部活の部長を思い浮かべた。
神の子。
だったら、今の俺でも救ってみろチクショウ。
「ヤバイ、思考がおかしい……」
全部風邪の所為。
これ以上思考がおかしくなる前に眠ろう。
そう思って布団に潜り込んだ時、サイレントにしてあった携帯が光っているのを見つけた。
「んっ……」
別に今見なくても良いのに、どうしてか手を伸ばしてしまう。
おぼつかない手つきで携帯を開けば、『メール七件』の文字。
『七』という数字に何故か嬉しさを覚えて、一件一件メールを開いていく。