庭球夢
□現実逃避5分前
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「では改めて、失礼しまーす」
今度はガラガラと戸が開いた。
これで開かなかったら、マジで蹴破る所だっただろう。
そして後で怖い事になっているというオチ。
そのオチだけは回避されたので良し。
で、保健室の中には誰の姿も見えなかった。
ただそれは『見えない』という事であって、『居ない』と同義語では無い。
その証拠に、3つあるベッドの内1つがカーテンで遮られている。
「あそこに居るのか、保健室を自分の根城にしやがった野郎は」
本当は今すぐベッドにダイブしたいが、何故か怒りがこみ上げてくる。
境目になっているカーテンに手を掛ける。
これで本当に病人だったらどうしようとか、ナノ単位で考えなかった。
むしろ病人であった方が良かったと思うのはこれから数秒後の話。
「お顔拝見!!」
シャアッとカーテンを引く。
と、見覚えのある銀髪と茶髪が一つのベッドで寝ていた。
上半身裸で。
「………」
時が止まる。
思考も停止。
しばらく硬直していた私だったが、時間が経つにつれて状況を飲み込んだ。
どうみても事後です。
飲み込まない方が良かった。