立海

□天気予報は雨のち君
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あぁ、雨だ。
5時間目が半分程過ぎた頃、ふと外を見た仁王は思った。
朝方から墨を撒いたような薄暗い雲が空を占拠していたので、ある程度予測はしていた。
今でこそ霧のように細く降り注いでいるが、今日の日課が終わる頃には本格的に降り始めるだろう。

(この時間から降り始めたら部活は厳しいじゃろうなぁ……。体育館も普段から使用率高いしな)

授業も聞かず、放課後に思考をトリップさせる。
大好きなテニスが出来ないのは辛いが、それよりも何よりも大好きな人と会える時間が減ってしまうのが辛い。
しかし、たった1人の少年の想いごときで天候は動いたりしない。
そんな事は常識と言わんばかりに、仁王は退屈そうなあくびをして、思考を夢の国へとトリップさせた。
5時間目が終わるまで後15分。

ーーー

結局5時間目どころか6時間目とHRまで睡眠に費やした仁王は、同じクラスの丸井に叩き起こされて引きずられるがままに昇降口まで降りてきた。
やはり部活は中止のようだ。
聞くところによると、厳格な副部長は雨天決行ならぬ雨天強行で部活をしようとしたらしいが、顔だけは温厚な部長と口の達者な参謀に言いくるめられたらしい。
詳細は全くもって不明だが、もう霧雨とは呼べない天候の中でラケットを振るのは免れたという事だけはテニス部員全員に伝わった。

「真田もありえねーよなぁ。この雨の中部活したいだなんて」
「そーやの……」

まだマトモに回転しない頭でその場しのぎの相槌を打つ。
また出そうになるあくびを飲み込み、色とりどりの傘が並ぶ傘立てに手を伸ばす。
が、その手は行き場を失ったようにさまようだけだった。


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