立海
□天気予報は雨のち君
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それから20分から30分位の時間が経った。
その間にクラスメイトや部活の後輩、時には名も知らぬ女子からも傘の貸し出しを持ちかけられたが、全て断った。
例の半分本当で半分嘘を口実にして。
何故そこまで頑なに彼を待ち続けるのかと聞かれたら、それはただ会いたいだけだと答えられる。
本当に、ただそれだけで。
(我ながら女々しい思考回路……)
しかし、そんな彼の想いとは裏腹に、その彼は気配も感じられない。
もう昇降口も閑散としていて、相変わらず降り注ぐ雨の音だけが鼓膜を叩く。
流石に限界を感じ、すっかり冷えてしまった体をさらに雨の中に放り込もうとした。
「仁王くん!」
それを踏み留めたのは、紛れもない待ち人の声だった。
「柳生……待ちくたびれたぜよ」
微笑もうと思ったが、寒さで頬が引きつって上手く笑えなかった。
柳生はそんな仁王の冷え切った手を握り、どうして?と疑問を投げかける。
握られた手の甲がじんわりと暖かみを持つのを感じながら、仁王は素直に答えた。
「傘盗まれてな、お前に借りようと待ってたんよ」
「それでしたら私で無くとも良かったのでは……?」
「お前が良かった。柳生じゃなきゃ嫌だった」
会いたかったから。そう言い切る頃には、仁王の体は柳生の腕の中に収まっていた。