立海

□一夏の神様
2ページ/4ページ


「……暑い」
「それで35回目だね」

一人だと思っていた空間に飛び込んできた声。
ビクッと体が跳ねる位驚いた事を隠す為に、辺りを見回す。
視線を俺がもたれ掛かっている木の後ろに移すと、先程の声の持ち主が同じようにもたれ掛かって居た。
白いキャップの鍔がこっちを向いている。

「青学の一年ボウズか」
「そーゆーアンタは立海の詐欺師さんだっけ?」

とぼけた口調じゃったが、絶対覚えてるハズだ。
自分で言うのもアレだが、俺と柳生は関東決勝で強烈なインパクトを残したと思っている。
そうなる様に作戦を立てたしな。

「いつからおった?」
「アンタとメガネの人が来る前から居たよ」
「ほう……」

コイツもなかなかのサボリ魔の様だ。

「人の会話を盗み聞きして、なおかつその中に出てきた単語をカウントするとは……かなり悪趣味な暇人やの」
「アンタには言われたく無いセリフだね、それ」
「俺は暇人じゃ無かよ」
「ふぅん………」

疑いの目を向けられた。
失礼な奴じゃ。
確かに俺は嘘つきで詐欺師だが、これは嘘じゃない。
なぜなら、俺は本来この時間に作業を任されているからだ。だから本当は暇じゃない。

「ますますタチ悪いじゃん」
「なかなか言うのぅお前さん」

そんな決して和やかとは言えない会話を交わしていたが、さてと、と越前が呟いて立ち上がった。
短パンに付いた芝を払っている。

「俺も作業有るから行くよ」
「いちいち報告せんでも勝手に行けばええじゃろ……うわっ!?」

急に視界が薄暗くなった。
頭を軽く押さえられているような感覚。

「熱射病には気をつけるんだね」

ニヤリと生意気な笑いを浮かべる越前の髪が風に揺れた。
キャップを被っている時には分からなかったが、うっすらと緑がかっている。
その時、俺の頭に有るものが奴のキャップだと気が付いた。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ