立海

□グットナイトラック
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午後8時52分。
私は珍しく夜の街並みを歩いていました。
高校生とも成ればそれなりに門限も遅くなるので、外出自体は可能ではありますが、外出する理由が私にはありません。
まぁ理由が無くとも、ただ単に「外に行きたい」と言うだけで外出してしまう方も居ますが……。
しかし、今の私は明確な目的を持って行動を起こしています。
曲がり角を右折すると、目的のコンビニエンスストアが視界に入ってきました。
2ヶ月程前に開店したばかりのチェーン店で、常時3、4人程度のお客が店内で思い思いに行動しています。
私が入店した時も、やはり2名程のお客が思い思いに行動していました。

「いらっしゃいませー」

間延びした、接客業にしてはやる気の無い声。
多分同年代のアルバイト店員でしょう。しかし、私はその声に聞き覚えがありました。
つい最近、夕方頃に聞いた、忘れるはずの無い声でした。

「……仁王くんですね」
「んっ?おぉ柳生か」

驚いた口振りでしたが、表情の上ではいつものようにうっすらと笑みを浮かべ、レジカウンターに立ちながら括ってある後ろ髪を弄っていました。

「何をしているのですか」
「バイト」

私が予測した通りの返答に、溜め息を一つ。
勿論彼もそれを見越してわざとそんな返答をしたのでしょうが。
いつもの事なので特に気にせず話を続けました。

「いつ頃からここで?」
「2週間前から。月・水・金の夕方だけじゃが」

謙遜するように言いましたが、我々立海の練習は毎日下校時刻ギリギリまで行われています。
その厳しい練習の直後にアルバイトをすると言うのは容易では無いはずです。


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