立海

□仮面を外して
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「なら何であの時素になった?」
「なろうと思ってなった訳ではありません」
「不本意ってやつか」
「ええ、まぁ」

またバツが悪そうに笑う柳生。
夕焼けに照らされたその顔が、寂しそうに見えた。

「……辛くないか?」
「え?」
「ずっと仮面つけたまま生きてて辛くないんか?」

仁王は歩みを止め、柳生の手を握った。
柳生は少し冷たいその手を軽く握り返し、仁王の正面に立つ。

「どうして、あなたがそんな表情をするんですか」
「だって……」

今にも泣きそうに顔を歪める仁王の頬に手を添える。

「確かに辛かった時期もありました。もう諦めかけた時期もありました。
 でもあなたが居ました。あなたはあんな私まで受け入れてくれた」
「あんなって……そこまで卑屈にならんでもえーよ」
「ですが……」
「俺はむしろ素のお前の方が好きかもしれん」

突然の告白に、柳生は口を閉じる事も忘れて呆然としていた。
それが仁王の目には間抜け面に映り、思わず吹き出した。

「ククッ……何ちゅー顔じゃ」
「誰かに聞かれたらどうするつもりですか……」
「それはそれで」
「全く……」


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