立海

□君と僕の壊れた世界
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「お前さんはこの世界好きか?」


それは貴重な昼休みを屋上で過ごしている時の会話だった。



君と僕の壊れた世界



「いきなりどうしたんですか?」
「何がじゃ」

僅かに雲がかった空の下に男が二人。
世間的には詐欺師と紳士と呼ばれている二人だった。

「何故そんな事を私に聞くのですか?」
「深い理由は無か。俺が授業中にふと思った事を、お前はどう感じるかと思っての」

フェンスに背を預けながら、仁王がニヤリと笑う。
その真横に立っていた柳生は、そんな仁王を視線だけで見やった。

「授業中に他の事を考えているのは頂けませんが……貴方の思考には興味が有りますね」

中指で眼鏡を押し上げる。

「貴方はどう思っているのですか、この世界について」

そう言って、仁王と同じようにフェンスに背を預けた。
カシャンと乾いた音が屋上に響いた。

「俺はこげな世界、嫌いじゃ」

無感動に、無感情に仁王は言った。
少し寂しそうな表情を浮かべて、空を見上げた。

「人間関係は面倒くさいし、女はうっとうしいし、何よりつまらん」

テニスはおもろいんじゃけどな、と付け加えた。

「世の中も暗いニュースばかりやし、そーゆーの見ると人間って最悪じゃなと思うんよ」

世界を作り上げているのは人間だ。
その人間が嫌いならば、イコール世界が嫌いと言う事何だろう。

「こんな事言っとる俺はおかしいんかの、柳生」

空に向いていた視線を柳生へ向ける。
運良く、もしくは悪く、視線と視線はぶつかった。

「貴方がおかしいかなんて、私には決められませんよ」
「お利口さんじゃの柳生は。人を憎んだ事なんて無いんと違う?」

皮肉を込めて仁王は言った。
柳生はあからさまに不機嫌な顔になった。

「人を聖職者みたいに言わないで下さいよ。私だって腹ただしいと思う時もあります」

だったら、と仁王は口を開いた。

「お前さんもこの世界は嫌いか?」

そう言って柳生を見る目が、どこか虚ろに見えたのは気のせいでは無いだろう。


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