立海

□誕生奏歌 ver.HY
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【下準備編】


とある週の日曜日。
立海テニス部レギュラーは県内の大型デパートに来ていた。
しかし、そのメンツに柳生は居ない。

「別に仲間ハズレって事じゃないよ」
「部長、誰に向かって話してるんスか?」

幸村の言う通り、そんな陰湿なイジメなどでは無い。
むしろそれは今回は運良く着いて来れた真田にこそ適用される。

「というか弦一郎。お前どうして今日の事知っていたんだ?」
「丸井とジャッカルが話しているのを聞いたのでな」
「………そうか」

柳はチラリと原因の二人を見た。
二人は目をそらした。

「幸村。早く行かんで良いのか?」
「いやもう行こう。今日は誕生日に向けての第一段階だからね」

そう。
彼らは数日後に控えた柳生の誕生日の為に、今日ここに集まったのである。

「予定通り、俺と柳と残念ながら付いてきてしまった真田はケーキを選ぶから」
(残念ながらって……)
「んで、俺達はプレゼントを選ぶ、と」

そうそう、と幸村は頷く。
ちなみにこの組み分けは柳の手に寄るものである。
総思案時間15秒。

「ならば行くか」
「仕切ってんじゃねーよ、オマケが」
「精市、オマケだと特典の様で言葉が良すぎる」

そんな中傷を吐き捨てながら、幸村と柳は地下のフードコートへ足を進めた。
後ろを付いていく真田が哀れに見えたが、誰一人何も言わなかった。

「……じゃ、俺達も行くか」
「あー、俺別行動で」
「えっ!?」

気だるそうな仁王の発言に、切原が耳ざとく反応を返す。

「何でだよ。皆で楽しく選ぼーぜい」
「いやでも……やっぱ柳生の誕生日は特別じゃからなぁ」

少し嬉しそうに、仁王は言った。
仁王と柳生の関係を知る者なら、その理由にもすぐに辿り着く。

「あー……しょうがねーか」
「そっスね」
「分かったよ。納得いく物選んで来い」

理解ある三人。
しかし、その裏には少し「面倒くさい」という感情が有ったり無かったり。

「スマンな。んじゃ、頑張りんしゃい」

そう言って仁王は単独行動を開始した。
跳ねる後ろ髪を見ながら、丸井が一言。

「……今ちょっぴりだけウザいと思っちまった……」
「……まぁ否定は……しねぇけどよ……」
「真田副部長のウザさに比べたら可愛いモンッスけどね」

何故か引き合いに出される真田であった。


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