よろずお題部屋

□2人の約束
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絶対に………

帰るんだっ!!

















『ギャオオオオオオォォォォォォォン!!!』

地響きを、嵐を起こすほどに激しく、蛇のような竜のような姿をした魔王が吼える。次いで雷を落として来、それを召喚獣の防御魔法でダメージを最小限に抑えていく。

『この世界』に居場所がないと思い込んでいたバノッサは、世界の破滅を目論んだオルドレイクに利用され、魔王のよりしろにされてしまった。そして今はもう、自我も意識も魔王に喰われ、ただただ暴れ狂っている。


「ハア……ハア……」

漫画とかでのいわゆるラスボスとかで出てきそうな『魔王』の肩書きの通り、今まで戦ってきた奴等とは桁外れな力を持っている。こっちは防戦一方だ。俺はエルゴの加護のおかげで召喚獣の力を通常よりも高く受けられるが、俺だって人間だ、体力にも魔力にも限界がある。

致命傷こそ負ってはないが、足がフラフラになってきて、立つのもやっとだ。剣を支えにして体勢を楽にし息を整える。


「ちくしょう……っ!こんな所で、くたばってたまるかよ!」

ガゼルが息も途切れ途切れに叫ぶ。



……そうだ……


「エルゴの加護をまともに受けているのは、俺だけじゃないか……皆は俺以上に辛いんだ。俺が根を上げてどうすんだ!」

自分を叱咤する。俺は皆のためにも、最後まで戦い抜かなきゃいけないんだ!!


……あいつのためにもな……!


















赤いエプロンがとても似合い、強くて優しい女の子……リプレの顔が頭に浮かぶ。

俺は、あいつと約束したんだ……!

絶対に、帰るって。


あいつは今も俺達を待ってくれているんだ。大切な人がまたいなくなるかもしれない、もう二度と帰ってこないかもしれないという耐え難い恐怖と戦いながら。

この戦いの前、泣きながら本心を明かしたリプレを見た時、俺は自分が情けなかった。いつの頃からか俺の中でとても大きな存在になっていた彼女を、ずっと苦しめていたことに気付きもしなかったんだから……

だから、俺は誓った。何があっても、絶対に帰ると。リプレが待ってくれている家こそが、俺の帰るべき場所だから。


もう1度、両足でしっかりと大地を踏みしめ、剣をかざす。そして、召喚獣を送り返すための魔力に意識を集中させる。



刹那の後、眩い光が魔王を包み、魔王が悲鳴をあげる。

「バノッサ……本当は、お前やカノンも救いたかったけど……助けられなくて、ごめんな……」

自分の非力さに、一瞬うなだれる。

「……魔王よ!帰るべき場所に帰るんだ!」

『ギィャオ…ォォォォォォォォン……』


閃光と共に、最後の雄叫びを残して魔王は消えていった。


その後、エルゴに呼ばれ、新しい結界を張れば俺は地球に、この世界の召喚獣は元いた世界に帰れると知った。


でも……俺はそうしなかった。召喚獣が全ていなくなれば、きっとこの世界は混乱する。

それに、今すぐ帰れば、リプレとの約束を果たせない。だから俺は仲間達に告げた。



「さあ、帰ろう!俺達の家へ!帰るべき場所へ!」


〜fin〜
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