よろずお題部屋

□君の背中
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とある休日。
ナツミはソルを近くの河原に連れてきた。

リィンバウムとは文化が全く異なる地球でまずソルは『生活に慣れる』ことから始めなければならなかった。

そしてこの日ナツミはソルの行動範囲拡大のために『自転車の乗り方』を教えることにした。



「っとっと………のわあぁぁっ?!」

ガシャンと音が響き、自転車と共にコケかけるソル。

「あー!なにしてんのよ!ソルってばドジー!」

壊したら弁償だかんねー!と乗り手の心配を全くせず笑うナツミ。

「だーっ!何でこんなの乗れなきゃなんねーんだ!『ばす』とか『でんしゃ』があるんだろ!?」

「こっちの世界じゃ乗れて当然なの!そーゆーのはお金かかるの!」

やれエコだのやれ自転車は人類の発明した機器の中でも最高に素晴らしいだのナツミ節にうんざりしつつも、時間が経つにつれ不安定ながらも乗りこなしつつあるソル。


昼の暑さが和らぐ頃には『何とか』一人前になった。


「どうだ?ナツミ!」

「よーし、合格〜!それじゃ最終試験〜!」

「は?」

得意気に叫ぶソルに応えると、ナツミは自転車の荷台にどっこいしょと後ろ向きに腰掛けた。


良い子は真似しちゃいけない『二人乗り』である。


「これで家まで行くこと!」

「ま……マジで……?」

「そ!マジ!」

運動神経は良くとも基本もやしなソル。二人乗りに耐えられるかは正直危うい。

「さぁレッツゴー!」

笑顔で宣告。









ナツミに言われた通り二人乗りを何とかこなし走っていくソル。ナツミはソルにもたれながら「らくちんらくちん」などと言っている。
正直暑いが、体が触れ合えているという事実がソルをやる気にさせていた。


出逢いは偶然。それなのに自分は彼女に多くの厄介事を押し付けた。自分が背負うべきだった業を彼女は泣き言1つ言わず、それどころか笑顔で自分や仲間を引っ張りながら受け止めた。

(……こんなに小さな背中で、全部背負いやがって)


男として情けねーぜと考えていると、思わず噴き出してしまった。

「んー?どったのー?」

「いや、なんでも」

「?」

ソルの態度にナツミの頭に疑問符が浮かぶ。






(今まで、散々背負わせちまったな)

(多分、これからも色々迷惑かけちまうだろうけど……)

(いつか必ず、お前を支えてやれるようになるから)

(………待ってろよ?)

〜fin〜
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