ひぐらし小説
□不安
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昭和58年、9月。
古手梨花は悩んでいた。
「はぁ………」
「梨花、どうしたのですか?」
「羽入?別になんでもないわよ。」
「そんなはずないのです、顔色が良くないのですよ?」
今までずっと長い間一緒に過ごした者同士、隠し事は簡単には出来ない。
「……これからの未来に何か不安でもあるのですか?」
あの永い魔の6月を乗り越えたが、それでもこれからは未来などわからない。生きていくことに何か恐怖でもあるのだろう。そう思い羽入は訊ねた。
「……いいえ、私達部活メンバーなら、きっとどんな困難でも力を合わせて越えて行けると信じてる。」
「じゃあ、どうしたのですか?」
首を傾げて羽入は訊ねる。
「たとえ部活メンバー同士でも、これだけは力を合わせるわけにはいかないわ。」
挑戦的な目をした梨花に、羽入の頭にある予感が過ぎた。
「まさか、圭一のことなのですか?」
「……そうよ。私は圭一が好き。私だけじゃない。レナも魅音も沙都子も、あなただってそうでしょ?」
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