ポケモン小説
□素直な気持ちを君へ
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―何でカスミのことでこんなに考えてるんだ―
ふと、今までのことを思い出す。
カスミと出会ったのは、俺がマサラタウンを旅立ってすぐだっけ……
あまりにも考えのない判断ミスでピカチュウを傷だらけにしちまった俺を、初対面ながら思いっきりひっぱたいてきたな……あの時は呆然としたけど、今思えばあれはカスミなりの厳しさと優しさだったんだよな……
で、自転車を借りてあげくぶっ壊して、弁償しろってことで一緒に旅をすることになったんだよな……何か、今思えば笑い話じゃんか……
でも自転車買うお金なんかなかったし、何よりジム巡りを優先したくて、弁償弁償ってしつこいあいつの言葉を流し続けてる内に、いつの間にかどうでもよくなって、カントーやオレンジ諸島、ジョウトとずっと旅を一緒にしたんだよな……
そう言えば、あの頃俺達はいつも喧嘩ばっかりしてたな……
考えがすれ違えば、俺もムキになって張り合って、互いに引き下がらなくて……
正直、よく旅が出来たなと思う。タケシやケンジみたいな仲裁人がいなけりゃ、ずっと悪い雰囲気のままだったかもしれない。
でも……いつの頃からか、あいつはいつも俺のことを気にかけてくれていたようにも思う。俺が死にかけた時は泣いてくれたし、ポケモンリーグで負けて、情けなくふてくされていた俺を励まそうとしてくれた……結局また喧嘩になっちまったけど。
……それに、アーシア島での騒動の時は、氷の海に落ちて気を失った俺を、自分の身の危険も顧みずに助けに来てくれた。
もしあいつがいなかったら、俺は今みたいに成長出来てなかったかもしれない。
ジョウトリーグが終わった後、カスミやタケシと別れることになった時、とても悲しかった覚えがある。……その悲しさをかき消すように俺は必死に走って帰ったっけ……
「そうだ……」
カスミ達は、今も昔も俺にとって『大事』で『特別』な存在なんだ。
あいつらがいたおかげで、いてくれたおかげで、『今の俺』があるんだ。
特にカスミに特別な想いがあるのも、『俺』が成長する1番大きなきっかけをくれていたからだろう。あいつと喧嘩したり、助け合ってきたことで、俺は成長できたんだ。
カスミのことを考えるたび胸がざわめいてきていたことに、今更気付いた。世間のよく言う『ドキドキ』がこれなんだろうか。
……まさか、これが恋ってやつなのか……?
そこまで考えて、さっき以上に顔が熱くなる。それにつれカスミのことが頭から離れなくなってきた。
本っ当に恥ずかしくなってきて、俺は無駄な抵抗だと知りつつ眠りの世界に落ちようと目を閉じた。
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