塚立 すみれ学園

□その女ガサツにつき!(後編:パーティーナイト)
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「ちょっと・・・」
何でアタシが、よりによってあの子の面倒をまた見なきゃなんないのよ!、という思いは苺の強引さと、和央の「お姫様」が気になる思いもあって、無視されてしまった。
「連れて行くって?」
「夜会だよ」
「あぁそうか」
納得した苺に代わって今度は貴姫が納得していないらしい。
「私は行かないって言ってるじゃないですか、だから真琴先輩ももう帰ってください。おくってくれてありがとうございました!」
ふてくされても、あんなに拒否をしていても、律儀にお礼をするなんて、「かわいい」と3人がソレゾレに違う受け取り方ではあるが思った。
「ここにも居た!駄目なのよ出席は義務です!」
「え?そんな・・・」
「あなたも外部からの、しかも転入だから知らないかもしれないけど、出られない理由が無い限り、出席は義務ですよ」
と初めて先生らしい口調で告げる。
「じゃぁ・・・。『出席しない』じゃなくて、『出席出来ません』です」
俯いて貴姫はいった。
それを3人は心配そうに見つめた。
黙り込んだ貴姫の心情を理解するものなどいなかった。
私には別世界すぎる。
そんな強制的に迫ってくる劣等感など、金銭的に社会的には恵まれた者達にはわからないのかもしれない。
「何故?」
そう聞かれて、でもそんな劣等感を告げるのが、本心を打ち明けるのが恥ずかしくて情けないと思った貴姫は、取り繕った、しかし嘘ではない理由を告げる。
「ドレス・・・持っていないんです。それに怪我をして参加しても、みんなの邪魔になってしまうだけだし。
今日は昨日受けられなかった授業の勉強を部屋でしています、だから私の事は忘れて、みなさん楽しんできてくださいね」
「貴姫・・・」
寂しそうだと、真琴は思った。
『私の事は忘れて』なんでそんなこと言うんだ。
ただの夜会だ、すぐに終わる。
例え、夜会に貴姫が参加しなくても明日にはまた会えるじゃないか。
真琴の心は落ち着かない思いに覆われた。
普段は能天気、頑固で、元気で明るい、でも時折儚くて頼りがいのない顔をみせるような気がしてならない。
一人にしておいたら消えてしまいそうで。
それは、出会ってから彼女を見つめてきた真琴が時々感じていた事だった。
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