塚立 すみれ学園

□その女ガサツにつき!(後編:パーティーナイト)
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「あら、珍しく早いお帰りじゃないの、和央」
と、寮母的な役目も勤める苺マキは、寮の玄関口で鞄を肩に担いだ少女に話しかける。
「別に」
と簡潔に、そして不機嫌きわまりない態度で返す姿、そして今朝の『かわいらしい狼』を思い出して、苺はプっと口元に小さな笑いを浮かべた。
「今夜の宴用のおめかししに早く帰ったのかな?みんなはそうみたいだけど」
「はぁ?あんなもんいかねぇよ!知ってんだろアタシが『あんモン』興味ないの」
「まあ〜ね〜」
ニヤニヤと、玄関を入ったロビーにある受付のカウンター台に頬杖をついて答える姿は、どこかセクシーさを表していて、そして陽気にも見えるのだが、今の和央には『ウザイ』以外ないようだった。
「なんで早いのよ〜、デート?」
「・・・・・」
「和央、外部入学だったから知らないかも知れないけど、生徒会主催の催し物には出席義務があるのが、この学園の決まりなんだよ〜」
「え?」
初めて聞いた、と和央はカオで語り、うんざりだと目をそらした。
「今夜は海沿いのお屋敷でのパーティーなんだから、おめかしして参加しなさいよ〜。ドレスくらいもってんでしょ。」
和央は、この学園には相応しくないような格好と言動でちょっと有名人なのだが、親はそこそこの会社の社長で、一般社会からすれば『お嬢様』なのだ。
親は熱心に学園に寄付をよこすし、いかにも『お嬢様』そして、この学園の生徒として似つかわしい洋服や装飾品を月に何度か海外から送ってよこしているのを、荷を解かずに部屋に置きっぱなし、あるいは寮の受付に何日も取りに来ないのを部屋まで届けて、ついでにクロゼットにしまってやっている苺マキは知っているのだた。
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