★〜club 双龍〜★

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■not女体。美しい男性が女装をして接待してくれるクラブが普通にある世界…みたいな感じで読んで頂けるとありがたいです




「club 双龍(1)」



 薄暗い店内に、安っぽい100円ライター石の擦れる音がカチカチと何度も響く。

「…オイ、お客さんがくる前に煙草吸うなっていつも言ってんだろ?」

「いいじゃねーか、小十郎の小言は聞き飽きたっつーの…ん、駄目だこのライター。すまねぇ、火ぃ貸せ」

 カウンターの中でグラスを磨いていた小十郎は、ベストの胸ポケットからジバンシーのライターを取り出すと、慣れた手つきで火に手をかざし、政宗が指に挟んだ煙草に火をつけた。

「…ん、Thank you。何、ソレ。高そうだし、女もんじゃねえ?」

 政宗は気持ち良さそうに、胸に煙を溜め込むと、ゆっくり吐き出した。

「というか…政宗が接客するんだぜ? お前こそ気にしろよ、もっと。それ、100円ライターだろ?」

「いや、厳密に言えばスロ屋で4枚交換だから、80円ライターだ」

 小十郎は呆れた顔で、素知らぬ顔の政宗を見つめると、深いため息を吐き、またグラスを拭き始めた。

「…客、こねーな」

 カウンター席に腰をかけていた政宗は、真っ青なホルダーネックのロングドレスを翻し、席を立った。
 向かった先は、カウンター内の冷蔵庫。高い背を縮ませ、冷蔵庫に頭を突っ込むと、ビールと冷えたグラスを取り出し、鼻歌を歌いながらまたカウンター席に戻って行く。

「…オイ、政宗。誰が飲んでいいと言ったんだ?」

 政宗はその言葉をいとも簡単に右から左に聞き流し、

「あ、小十郎コレ開けて」

睨みつける小十郎にビールを片手でひょいと差し出した。小十郎は無言で受け取り、カコン、と小さな音を響かせると栓を抜き、いつものようにカウンターに置いてあるグラスにビールを注いだ。

「じゃ、かんぱーい」

 政宗は待ちきれない様子で、小十郎にウィンクして、グラスを高く持ち上げると一気に飲み干した。

―――――トルルルル…

 またひとつ小言でも、と思った矢先電話が鳴ったので、仕方なく小十郎は電話へ向かった。

「ハイ、クラブ双龍でございます。ええ、松永様、はい…いつでも結構ですよ、ハハハ…ええ、閑古鳥です。政宗も待ってますよ。では失礼致します」

 小十郎はそっと電話を置くと、苦虫を噛み潰したような顔で、政宗を見た。

「何? 久秀来るんだ。アイツ羽振りいいから好きだぜ〜」

(俺は…嫌いだ)

 ニコニコと嬉しそうな政宗を見て、小十郎はさらに不愉快そうな顔をする。政宗が久秀に、他の客以上懐いているのが気に入らないが、上客なので何も言えない。

(続く)
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