★〜club 双龍〜★
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「なあ…政宗?」
「ん?」
政宗は眠そうな目を開け、小十郎を見つめ返す。
小十郎は何を言いたかったのかわからぬまま、胸のつかえも取れぬまま、
「…いや、何でもない」
ゆっくりと静かな商店街をふたりきりで歩いた。
政宗は自宅の玄関前に立ち、ハンドバッグから鍵を取り出すと、きょろきょろ周りを見渡し、真後ろで腕組みをして立っている小十郎と目が合うと、あれ? という顔をして、隣にある小十郎の部屋の扉を指差した。
「いけないか?」
小十郎がいつになく憮然とした態度であることを、少し不思議に思いながらも、
「別に」
と、政宗は応え、扉を開ける。
すると、いきなり小十郎は政宗を部屋の中に押し込み、玄関に押し倒した。
「政宗…ッ!
お前は俺を…」
(どう思っているか? …なんて怖くて聞けるか!)
大きな声を上げた小十郎に、政宗は驚いたが、その前に背中に衝撃が走る。
「痛ッ…て
俺を…? 何?」
背中をしたたか打ったが、押し倒す時小十郎が少し引っ張り上げるように力をかけたので、さほど強くは打ち付けなかった。しかし痛いものは痛い。
「……」
特に抵抗もせず、小十郎の返事を待つように、目の前の顔を見つめた。小十郎は眉間に皺を寄せ、一見怒っているかのように見えたが、政宗にはその目の中に何か違う感情があるのを感じ取った。
政宗も小十郎につられて、眉間に皺を寄せる。
「この…コート。久秀に貰ったんだよな?」
小十郎は上から乱暴にボタンを外し始めた。真っ青なドレス一枚の、薄い胸元があらわになるが、政宗は応えないでじっとしている。