★〜club 双龍〜★

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「いらっしゃ…い、あ、久秀! また来てくれたのか〜嬉しいぜ。今行くからカウンターに座ってろよ」

「コラ、政宗! 松永様を下の名で呼び捨てにするな!」

 ドレスの裾を引き上げ、忙しそうにトテトテと走る政宗を、久秀は眼を細めて眺めると、

「構わぬ。可愛いヤツだ」

 そう呟いた。政宗は嬉しそうに久秀に近寄り、軽くハグをし、上着と荷物を預かると、カウンターに促す。

『hisahide☆』と政宗の文字で書かれたプレートのついたボトルと、コースター、グラスを二つ用意すると、政宗は久秀の横に座り、手際よく水割りを作る。

「…あちらにいるのは新しい子かね?」

 小十郎は少し眉を潜めて、応えづらそうに、ええ、しかし…とお茶を濁した。

「いやはや、それはいい。今日は連れが居るのでね…今、華を買って行きたいと言ってね」

―――――ガチャッ、カラカラン…
  いや〜ッ、遅れちまった!

 花束をしょって、政宗と同じように眼帯をした紫色のスーツを着た男が入り口に立って、はあはあ、と息を切らしている。

「…早かったな。元親のために一人用意してくれている」

 久秀がグラスを傾けながら、ボックス席に座る元就を顎で指した。

「はは…ようこそいらっしゃいました。いやいや、男前のお客様ですなー。はい…長曾我部様とおっしゃる? えー…どうですか、そちらの子、お気に召さないんじゃないですか? うちは政宗が人気ナンバーワンでして! どうですか! ご一緒に! カウンターで!」

 小十郎が必死で話しかけても、元親は、ボックス席で練習のために用意したキスチョコをぽりぽり無表情で食べている元就から眼をそらさない。

 元親はやっと気づいたように、花束を持ったまま、元就のもとへ向かった。

(続く)
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