おはなし
□折り紙
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天気は晴れ。これでもかという位の晴れ。予報によると雲ひとつない快晴、らしい。
朝起きた時の汗ばんだ体と、今現在窓から差し込む光とで、気温が嫌なほど高いのは分かっている。こんなときに嬉々として表に出るのはさほどの馬鹿か、あるいはトンマか。
空調の完全に行き届いた自室にて、神代凌牙はベッドに寝そべりながらカードを眺めていた。絵や説明文を目で追っているが、その内容は既に頭に入りきっているので単なる暇つぶしだった。思いついたら調整しようかな、くらいの。
そして、凌牙の目がエアロシャークに差し掛かった時、携帯電話のバイブレーションが鳴った。
(誰だ)
凌牙の番号を知っている人物はあまり多く無い。デッキが崩れないように枕元に置き、交代で電話を取り通話ボタンを押す。黒く、角張ったフォルムのそれがかちりと音を立てる。
(……?)
いつもなら一瞬でディスプレイに表示されるはずの相手側の映像はなく、ただ黒いままだった。ボタンを連打するも、変わりはない。
代わりに、
『もしもし? 凌牙? もーしもしー!?』
懐かしい声がした。
名無しさん。
昨年からこの街を離れ、デュエルアカデミア本校に通っている幼馴染。
本校のあるは、まだ映像通信の電波が入っておらず、生徒はその機能がない電話を持つ者が多いと聞く。ならば、映像の出ないことも納得がいく。
そして向こう側から『りょーがぁ!?』と絶えず叫ぶ声はあまりにもエクスクラメーションが多かったので、「聞こえてるよ騒ぐなタコ」と返すと、さらに声が倍になってきた。予想以上で思わず携帯を手から落とし、悪いことに角が額に当たり、変な声が出た。床に落下はしなかったものの、それから今度は清々しいまでの笑い声が響いている。
ふ、と息をついて上体を起こした。