おはなし

□起きてる方が楽しいから
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わたしはそのとき、とてつもない睡魔に襲われていたので、彼が入ってきたことに気付かなかったんだと思う
もしくは、気づいたのだけど、夢であると処理したんだろう

寒さで目が覚め、ベッドで布団も掛けずに仰向けになっていたことに気づいた
同時に、電気がつけっぱなしになっていることに、はっとして身を起こす
ああわたし、寝ちゃったんだ!今、何時だ!?


「やあ」
「……あ?」


枕もとに置いたはずの携帯を探していると声がして、部屋を見てみれば、本来なら居てはいけない異端者がひとり
それは不法侵入ともいうもので、わたしはなんともガラの悪い声を上げてしまった
彼の口は半月のように口角を上げ、にことわたしに笑みを投げる
無視して携帯を探った あった 時間は、午前三時
ふうとひとつ溜息をつくと、ベッドの端にぼふ、と体重の掛かる音がした
見るとやつが頬杖をつきこちらをにやにやと見つめていた


「疲れてた?」
「うるさい」
「ベッドに直行はいいんだが、」
「うるさい」
「鍵くらいかけようぜ」
「うるさい」


ベッドから降りて、スーツのジャケットを勢いよく投げつけると、それはわざとらしく後ろに倒れた
確かにわたしの不注意で、鍵をかけ忘れるなんて馬鹿みたいで、彼のいうことは正論なんだけど
(なんかこう)
メイク落としのシートを乱暴に引っ張り出す 顔を拭く 腕を振りかざしてごみ箱にシュート


「やっぱり俺達一緒にいた方が良いって」
「うるさい」
「だって俺が来てくれてて良かった、って思っただろ」
「うるさいな、もう!……う」


背中と腹に圧迫感を感じる、ああそう後ろから手を回されているんだ
なんか知らないけど、こいつは気配を消して背中に立っている だから困る
しっかりと筋肉の付いた腕はわたしを放さないように、ぴったりと固定していて、わたしと彼の間に隙間はなくて
ハニーブロンドの髪が、ちらちらと視界に写りこんだ
すこし、いや、結構、息苦しい わたしにとっては 割と、居心地よろしくないんだ



「はなしてよ」



ぼふ
そう呟いて窮屈さから解放されたと思えば、わたしが放された先は、なんと先ほどまでいたベッドの上でした
……あ?











起きてる方が楽しいから、今まで我慢してたんだ!もういいよな!









おわる

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