おはなし

□ルックアット
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まわりの風景に紛れたところの
質素な暗殺チームアジト
現在集まっているのがいつもいるメンバーの半数にも満たないため
(都合良く問題児がいないからかもしれないが)、とても静かに思える

その一室
テーブルひとつ挟んで向かい合う、足が低く、とても豪華だとは言えないソファがふたつ
ひとつには寝そべるわたし
反対側のもうひとつには



「…プロシュート」

「なんだ」

「なんでもない」



ソファにだらし無く横になり、仰向きでファッション雑誌を読むわたし
足はソファの外に投げ出してある…別に長さが足りないわけじゃないけど
ひじ掛けで折れる膝
こうしていると、足がぷらぷらできで良い
あと、背骨にかかる負担も減るからすごく良い
ただそれだけの理由


方や我らが兄貴といえば
いつものスーツに身を包み、長い足を組んで新聞に目を流している
なんて様になる!
わたしが呼んだ直後にはその睫毛の長い目だって私のほうに向いていた
まぁ、すぐに新聞に行ったけど
そして、時折長い指にかかるコーヒーカップの取っ手
あれ、兄貴って長いものづくしね

あんまりこうやって見てても可笑しいから、わたしは雑誌に思考も視線ももどす
あー髪切って染めようかなあ
可愛いなあこの子
パラ、とページをめくる
それでもやっぱり



「兄ィ」

「あ?」

「なんでもない」



視界の片隅に写るきらきらしたひとがわたしの気を引いて
呼んで、返して、目が合って、さっきと同じに答えたら、兄貴はハァ とため息をついた

「あのな、言いてェことあるなら言えよお前」
「…さあ。無いと思うよ」

随分曖昧な返事だこと
意味のない問答はひとを苛立たせるだろう
もう呼ばないことにした

「…変な使い方しやがって」

兄貴の苦笑
たぶん足を掛けてふらふらしていること
その呟きに、今度は『でも好きなの』と笑って答えてあげた



わたしはきっと構われたいだけ
誰にも言ってやらないけど
呼んで答えてもらう喜びがわかる?
それでわたしを気にしてくれたらもっと嬉しいの
あなたから
わたしは呼ぶだけ









ルックアット


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