† 残 † 番外編
□私と彼の盟約
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「私と彼の盟約」
三者会議が終わって、それからしばらくロイズハルトとは全く声を交わす事は無かった。
だっていつも気難しい顔をしているし、何でかやたらとドールを連れてるしで、自分から声を掛ける気にはならなかったのだ。
だからあの日、デューンと一緒に城での滞在を交渉しに行ったあの日が、初めてまともに彼と声を交わした日になるのかもしれない。
まあ、見事に交渉は決裂したけれど……。
でも何故かその玉砕から日を置かず、すぐに城に残る事を許されて、晴れてこの城での生活が始まった訳だけど、相変わらずロイズハルトとは疎遠だった。
二言三言言葉を交わす事はあっても、それ以上の話題に発展する事などほとんど無かった。
いつもどこか影を帯びていて、不思議なオーラを纏っていたロイズハルト。
デューンやレイフィールの様に、私に対して気さくに応じてくれる事は無かった。
けれどあの日、レイフィールがエリーゼへの手掛りを見出してくれたあの夜、私のロイズハルトへの印象は一気に変わった。
どうしてだろう。
自分でも分からない。
分からないけれど、あの陽の差し込む回廊で見せてくれた彼の笑顔が忘れられなくて、自分でも戸惑った。
頑なに閉ざしていた扉を抉じ開けられた様な気がした。
レイフィールが言い掛けた言葉の意味も気になったけれど、それよりもなおロイズハルトの笑顔が瞼の裏に焼き付いて離れなかった。
それにあの時、レイフィールを見送った後、ロイズハルトに言われたんだ。
「何があっても、お前だけは生き延びろ」
って。
それが私と彼の盟約だから、と。
どういう意味だと聞き返す私に、ロイズハルトはまたふと微笑むと、「ずっと、こんな風に話をしてみたいと思っていた」とだけ囁いた。
彼は、濁りの無い真っ直ぐな瞳でそう言ったのだ。
「ずっと……な」
変なの。
そんな風に言われると、心がざわめいて仕方ない。
変なの。
……変なの。
fin.
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