BOOK

□arm's langth
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数十時間車を走らせ、街に着いたが、その日は何の手掛かりも無く移動と聞き込みだけで一日が終わった。

「此処もハズレだね、あんなに調べて何一つ収穫がなかったんだから」

「まぁ、こんな事もたまにはあるさ」

ディーンはそう言うが、たまにどころかココ最近はこんな感じが続いている。

モーテルに着きチェックインを済ませて部屋に入る。
ココ最近の行動パターンが繰り返されてうんざりする。

「俺はちょっと出てくるから、先に休んでろ」

「…何処行くの?」

取り敢えず聞いてみたけれど行き先は判りきっている。
此処に来る時見たBarにでも行く気だろう。
最近Barには行っていない。…いや、行かせない。行ったらならディーンはきっと女を口説こうとする。
…そんなことはさせない…。

やっと…僕のものに出来たのだから…。








僕は自分の気持ちに気付かないまま大学合格後直ぐに家を出た。
親父とディーンに何も告げる事も無く…。

家出当然の一人暮しに自由を夢見ていた僕は、愕然とした。
思い出すのは、ディーンの事ばかり…。

狩りで忙しい親父に替わり小さい僕の面倒を見てくれたディーン。
大好きなディーンだったけれど僕が大きくなるにつれて、その過保護さが疎ましく思えてきた。

何をやるにも監視されているみたいで落ち着かない。
親父との喧嘩の時なんか僕の意見は聞かずに親父の肩を持つ。

親父の当たり前だと主張する事に何の違和感も感じないディーンに呆れて家を出ると決意してからは録に口も聞かなかったはずだ。


それなのに…ディーンに逢いたい、声が聞きたい。

こんなことを毎日のように考えていた。

そんな悶々とした日々の中、僕にも彼女が出来た。
ジェシカだ…。
初めての彼女に浮かれていた僕だが、気付くと又ディーンのことを考えている自分がいる。
彼女を愛してるのには変わらないのにどこか違和感がある生活を過ごしていた。

忘れたくても忘れられないディーンの笑顔、その笑顔を似ても似つかないジェシカに重ねている自分に苛立ちが募る。




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