本編

□体育会系色
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「お前な」
ワタヌキの人差し指が眼前に近づけられる。
「ゴンゾーさんに膝の悪りぃ一年だって、覚えられてみろ、引退試合まで
出番来ねーぞ!」
うっ。
「聞いてんのか?」
聞いてる、聞こえてる。でも、オレ今、超ショック状態。完全に思考が停
止してる。
「二度と言うなよ。マジで痛テェならしょうがねーけど、オレ以外に漏ら
すな」

名門サッカー部の70分の1。名前も覚えられていない一年の印象は、警
察に捕まるより、膝が悪い方が重いらしい。

そうやって、70分の1は簡単に切り捨てられるってコト・・?

「おい、・・・モリヤ」
ワタヌキの手がオレの肩を揺さぶる。その手を思いっきり叩き落とす。
「ウルセー!!アンタにオレの気持ちなんかわかんねーよ!放っとけよ!!
さっさと教室戻りやがれ!」
ワタヌキが固まってこっちを見てる。
「だいたい、アンタのせいじゃねーか!なのに、なんだよアンタは、ヌケヌ
ケとッ・・・オレだってこんなコトなきゃ、膝の事だって言わねーよ!
それに、オレだって自力でここまで来たんだよ、今は70分の1でも・・・
絶テェー、負けねーよ!!絶テェー、ヤッてやる!絶テェーレギュラーに」
!!
イキナリ、ワタヌキの舌が入ってきた。
完全に隙間無く唇が繋がる。
息苦しくなって、思いっきり払い除けるまで食い尽くされた。
「な、何なんだよ、アンタっ」
「アンタとか言うな」
ワタヌキは少し俯いて、タイを緩めた。
「オレはこれでもエライ方なんだぜ?サッカー部の上下関係を甘くみんな。
陰口以外で呼び捨てになんかすんなよ?周りに、ウルセェのが山といるんだか
らな。・・・わかったか?」
わかってるよ。オレの周りにだっているんだ。アンタを悪く言うとキレるよう
なヤツが。
「モリヤ?」
威圧的に、壁に寄り掛かって腕組みしてこっちを見下ろしてくる。
「ワカリマシタ」
「オレは?」
「センパイ、デス」
ワタヌキの口元が満足そうに歪む
「先輩は絶対だ」
「ハイ」
あー、体育会系のこういう色が嫌だ。3月までの自分がうらめしい!
「キスしろ」
ギョっとして見上げると、したり顔が微笑んでいる。
チキショー、そういう事を言うか?
オレは意を決して近づく。唇が触れる寸前、
「あ、ディープな方な」
ワタヌキのニヤケた口が動いた。
「わがままなセンパイだな」
「そんなもんだろ」
オレは、噛み付くような、深く濃く甘く激しいディープなキスをしてやった!
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