超番外編

□ココカラ
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「オマエは遊ばれただけだって」
「そうだよ、気にすんなよ。も、向こうは忘れてるって」

オレのとッッてもいいオトモダチのシナキ君とアラセ君。

オレを挟んでコイツら。

誰かを慰めるって初めてか!?テメーら・・・!

と、思わせるような、グサグサと突き刺さるセリフを
二段構えでオレに浴びせてくる。


駅の改札出た正面。
オレ達はタクシー乗り場の近くの手摺にケツ乗せて、
ボーッと、通り過ぎてくニンゲンを眺めてた。

「だいたいさ」
シナキが腕を組んで、また言い出す。
「オマエって、んな一途だっけ?チガクね?」
それに応えるのはモチ、オレじゃなくアラセ。
「チガウね。チガウ。全然キャラチガウから。合ってない
から」


で、悟った。イジメ?これ、オレ、イジメられてね?

そして、二段攻撃はまだまだ続く。

「も、いんじゃねーの?ホラ、いくらでも相手してくれ
そうな奴いんじゃん?誰かと、ヤッちゃえよ、もう」
失礼にも目の前を通り過ぎてくヒトを指差すシナキ。
「サ、ンセーーー〜!」
ガッコじゃ見せないようなビシッとしたアラセの挙手。

ますますオレの背中が丸くなる。
「・・グレていいか?」
「セイショー!マジわかれって!何が悲しくてこんな
夕暮れに、若いミソラでタカトビしたヤーさんなんか
待ってなきゃなんねーんだよ!?遊べ!オマエに必要
なのは、愛でも恋でもねえっ・・・・セックスだ!」
決まった。とばかりにシナキはオレを指差す。
「シナキ、カッキー・・・!でも、愛のねえセックス
なんてムダ。ムダだから。射精損だから。どっちかっ
つーといるのは出会いだから。純粋に」
「いーんだよ!今必要なのは、こいつの中からそのオト
コの・・・なんだ?触った感じ?テアカ・・?つーの?
それを排除するためにヤルしかねーんだよ」
「あ〜、残り香、ってやつ?」
「うー、ビミョウにチガウ!けど。ニュアンスはそんな
もん。オイ、聞いてんのか?セイショー」


コイツらって不器用なだけ・・?
それとも本気で、言いたい事言っちゃってるだけなの?



”アソバレテタ”なんて、わかってるっつーの!
勝手にオレが忘れらんないだけで。
アッチはマジ”ワスレテル”に決まってる・・・ってのも
わかってんだよ。
でもな。
でも。
戻ってくるってオレに言ったんだよ。
なら、いいじゃん。
オレ、待ってたって。誰にもメイワク掛けてないじゃん。


オレを挟んで、今日の議題にケリがついた二人は、オレを
尻目に目の前のドーナツ屋の店員がブスだとか手首がねえ
とか話し始める。
腹減ったとか、甘いモンが食いてーとか言う二人に、声掛
ける。
「も、帰れよ」
二人がオレを見る。
「バッカ。バーカバーカ!!」
マジ顔のシナキ・・・。

それには引くぞオレは。小学生かよ・・。

呆れてシナキを見てるとアラセが溜息混じりに口開く。
「あのなぁ、セイショウ。オマエ、今、どんな顔してっか
わかってる?モノ欲しそーなサビシそーな顔してるって、わ
かってなくね?」
シナキが舌打ちした。
「そんなオマエをさ。この雑踏に、夜に変わってくこの街に、
置いてけるワケねーじゃん?オマエなんかすぐどっか連れてか
れてクスリでも嗅がされて、ボコにされて、拉致ヨ拉致。んで、
性奴隷。流行ってるって知ってっか?そんな中に一人で居させ
られるわけないっつーの、ったく」

なら、もっとイタワリの言葉とか掛けてくれよ・・っ

・・・とは言えないけど。
一応心配はしてくれてるワケだな。

「・・・ん・・。帰るか」
「オシ!なんか食い行こうぜ」
言ってシナキが先に歩き出す。



ムダだってわかってる。
でも。
待ってたい。
人がたくさんいるのに。
どうして、アイツはいないんだろう。

駅からは、毎日毎日知らない顔がアリみたいにウジャウジャ
出てくる。
その中に、居たっておかしくなんかない気がするのはオレの
気のせいなのかな。
毎日、少しだけでも。
賭けみたいに。
あと30分だけ、とか。
オレは駅前で改札を睨んでた。
そんなオレの奇行に気づいた二人は、有難くも、オレを諭し、
オレとシノノメの再会を絶対阻止しようとしていた。


でもなぁ。
会いたいんだよ、オレは。
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